ようこそ!CONFLEX iNSIDEへ!



 このブログでは,CONFLEXと呼ばれる 計算化学システムの開発陣が,計算化学を応援するための記事と,それと無関係(?)なネタや画像(写真)をアップしていく予定です.





 内容はどうしても化学者向けが中心になるので,一般の方には化学業界用語(?)などちょっと難しいかもしれません.けど,できるだけわかりやすく書いていきたいと思います.



人気blogランキングにほんブログ村 科学ブログにもエントリーしてますので,クリックをお願いします.


ということで,最新記事をどうぞ↓↓↓

2007年6月3日日曜日

「電子状態の計算法」



 計算化学の基本は、量子力学に基づく系の電子状態計算です。特に分子系には、非経験的分子軌道法が、さまざまな機能性分子の設計や開発に対して最も基本的でかつ重要な手法となっています。その計算コストは一番簡単なハートリーフォック法でも、用いる基底関数の4乗に比例するため、生体内や固体表面での化学反応解析等の大規模系の電子状態計算には膨大な計算コストが必要になります。現在でも、研究者が研究室レベルで「現実を反映した大規模分子系」の分子軌道計算を実現することは容易なことではありません。 「現実を反映した大規模分子系」の分子軌道計算を「低コスト=パーソナルユース」で実現するためには、計算量を軽減するための近似法を取り入れ、さらに計算機の性能を飛躍的に向上させることが必要です。


 計算コストを軽減するため、必要な計算をまともにする代わりに実測値やモデルを用いて計算量を削減する方法があります。実測値をパラメータとして導入し計算コストの高い分子積分計算のコストを軽減する方法は、経験的分子軌道法、または半経験的分子軌道法と呼ばれます。多くの方法が知られていますが、スチュワートが開発したMOPACの中に含まれるAM1やPM3が有名です。この方法は演算量が大幅に軽減されるにも関わらず、炭化水素などの系では計算される物理量が実測値をよく再現することから、非常に広範囲に利用されています。またこの方法の究極がヒュッケル法です。ヒュッケル法は、知る人ぞ知る非常にエレガントな分子軌道法です。解析的な取扱いが縦横にできますし、その特性多項式の係数は分子の共役系の構造と結びつけられます。ただし経験的または半経験的分子軌道法は、実測が無い系や金属のように周辺の環境によって様々な状態を容易にとる系には利用できないことや、計算結果の信頼性にばらつきがあることがよく知られています。


 他方、ハミルトニアンに近似を導入することで、計算すべき分子積分自体を簡素化して計算量を軽減する方法もあります。この方法は、計算量や結果の信頼性などの面から非経験的分子軌道法と半経験的分子軌道法の中間に位置づけられています。この方法は経験的パラメータを陽に含まないことから、第一原理分子軌道計算または第一原理計算と呼ばれています。最近、電子系のエネルギーなどの物性を電子密度から計算することが可能であるとする、密度汎関数理論に基づく第一原理計算が非常に多く使われるようになってきました。一番単純でわかりやすい第一原理計算法は、かのスレーターが開発したXα法でしょう。この方法の演算量は、基底関数のほぼ3乗に比例する演算量となります。第一原理計算は近似計算ですので、どのような近似(密度汎関数)を用いるかにより非常に多くのバラエティーがあります。つまり得意不得意があるということです。本法のご利用にはご注意ください。

 CONFLEX iNSIDEは計算化学を応援しています。






0 件のコメント: