メチルアントラセン(図1)の精密な回転線の観測が行われるようになってきました。そのため回転ポテンシャルを精密に計算する必要が出てきました。分子の対称性から考えると、図2の180°と150°が重要な構造であることが判ります。
図3が電子相関を含まないHF計算によるポテンシャル面です。基底関数は6-311G**です。メチルの回転角を除くすべての構造パラメータは最適化されています。180°が最安定構造で150°は遷移状態です。
一方、図4はHFの構造を用いたMP2計算の結果です。MP2には2体の電子相関が入っています。こちらでは150°が最安定で180°が遷移状態になっています。計算方法によってポテンシャル面の形状が大きく違います。
さて、図5は電子相関が中途半端に入っている密度汎関数法のB3LYP計算によるポテンシャルです。162°辺りが最安定で150°、180°ともに遷移状態になっています。なんだこりゃあ!!
さて皆さんはどれを信じます???うーん。
CONFLEX iNSIDEは計算化学を応援しています。
7 件のコメント:
コメント中に「メチルの回転角を除くすべての構造パラメータは最適化」ってありますけれども、構造最適化計算をしたなら、回転障壁を調べるまでもなく、どの角度が安定構造はわかるはず。(gaussianでなら計算でます)
それにメチルアントラセン程度なら、C1対称で密度汎関数法でも十分構造最適化できるはずです。
「どれを信じます?」って、計算しないの?
精密な回転ポテンシャルを検討するなら、メチル基の水素の2面体角のみを固定して(Z-matrixの1行空けで、すぐに対応できるはず)、他の構造パラメーターを最適化して、エネルギーを見るんじゃないの?
学部生?さん,コメントをありがとう.
ご質問の件ですが,少々誤解があるようですね.
本文中,図3~5は,学部生?さんがおっしゃるような計算をした結果ですよ.つまり,HF,MP2,DFTなど様々な計算手法によって,安定(エネルギー極小)構造も変わってしまうことが問題なんです.もちろん,基底関数を変えたって,安定構造が変わってしまいます.
学部生?さんは,計算の経験があるようですね.普段,計算結果がどのくらい正しいかをどのように検証していますか?実験値があれば,その値との比較はもちろんですが,それは「偶然の一致」の可能性もあります.その原因は?
実は実験値も測定技術の違いにより,後に訂正されることはあります.そして,計算も...
一度,ここで示したように計算手法を変えたり,基底関数の大きさを変えて計算してみてください.それぞれ異なる結果が出たら...なぜそうなるのか?を考えてみると,計算化学の理解がもっと深まりますよ.
ではでは.
ライセンスアウトが噂される創薬ベンチャーのメディシノバが個人投資家向け説明会に出てくる。
http://hercules.ose.or.jp/topics/ir_rounge20080919_01.html
できたらプロの目で見て質問でもしてやってほしい。プレゼンテーション聞いても素人にはウソか本当かわからん。
はじめまして。
すごく面白いブログですね。いつも楽しく拝見させていただいています。
もしよろしければ相互リンクをお願いできないでしょうか。
ぜひご検討よろしくお願いします。
私のブログは有機化学のトピックを紹介しているブログです。
有機化学の話
http://topsynthesis.blog39.fc2.com/
ご訪問ありがとうございます.
「有機化学の話」をリンクさせていただきました.
夏ごろには再開しようかと予定しております.
ではでは.
個人的には180だと感じています。
ま、計算機によるシュミレーションと実際は異なる場合があり得ますから、自分は薬物のドッキングシュミレーションなどをかつて学びました。
What is Life?
http://sammyclickpresswhatislife.blogspot.com/
をどうかよろしく御願いいたします。
偶然このブログを発見いたしました。
もう、更新の方はなされないのでしょうか。
計算化学関連のブログは非常に少ないので、ぜひ再開していただきたいのですが...
今回の話、非常に面白かったので、wB97XDやCCSDなどでも計算してみて欲しいです!
コメントを投稿