メチルアントラセン(図1)の精密な回転線の観測が行われるようになってきました。そのため回転ポテンシャルを精密に計算する必要が出てきました。分子の対称性から考えると、図2の180°と150°が重要な構造であることが判ります。
図3が電子相関を含まないHF計算によるポテンシャル面です。基底関数は6-311G**です。メチルの回転角を除くすべての構造パラメータは最適化されています。180°が最安定構造で150°は遷移状態です。
一方、図4はHFの構造を用いたMP2計算の結果です。MP2には2体の電子相関が入っています。こちらでは150°が最安定で180°が遷移状態になっています。計算方法によってポテンシャル面の形状が大きく違います。
さて、図5は電子相関が中途半端に入っている密度汎関数法のB3LYP計算によるポテンシャルです。162°辺りが最安定で150°、180°ともに遷移状態になっています。なんだこりゃあ!!
さて皆さんはどれを信じます???うーん。
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2007年7月24日火曜日
2007年7月15日日曜日
「並列計算のシミュレートって??」
前回のCONFLEX iNSIDEは...
前回,「並列計算をシミュレートする」ことで計算精度低下を避けることができる場合があることをお知らせしましたが、具体的にどうすればよいのかというお問い合わせがありました。なので、ベクトルの内積計算の例をお示ししましょう。以下を試してみてください(FORTRAN90で書かれていますので,C調な方は適切に書き換えてくださいね)。
このプログラムの上は内積計算をナイーブに実行し、下は内積を(並列計算のように)部分和をとって計算します。これにより、並列計算する(部分和を取る)ことで、情報落ちと丸め誤差の取り込みを少なくできる事がわかります。もちろん、誤差の集積の仕方は計算機によって違ってきます。ああ数値計算は奥が深い・・・。
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2007年7月1日日曜日
「多様な情報の中から」
近年のインターネットの発展と携帯電話の普及を背景に,10年前には考えられなかったほどの多様な情報が容易に手に入るようになってきました.特に,情 報へのアクセス方法としての携帯電話の普及が,情報の多様性と容易な取得を実現しました.情報量の増加とともにその質のバラエティな広がりも,全くのウソ から高度な学術的なものまで実に多様です.そのため,膨大な量の情報から自分が必要とする情報を得るために多くの労力が必要となりました.思えば太古の昔 からこの10年ぐらい前までは,必要な情報を集めるための手段を持つことが重要で,多くの文献を保存する図書館が重要な情報拠点でした.ところが,現在は 状況が全く変わり,多くの情報から本当に必要な少数の情報を効率的に選択し,集約する手段が必要となってきました.特に現在では,質の高い情報の確保と概 要の抽出技術に対するニーズが高まっています.
こういった膨大な情報からのエッセンス抽出の要求にいち早く対応したのがアメリ カで,YahooやGoogleに代表される検索エンジンや,類似性の高い情報の存在場所をまとめたデータベース(DB)があります.検索エンジンについ ては日本でもこのような技術の重要性がようやく認識され,10年以上も遅れて,政府主導で検索エンジンの開発が進められようとしています.
計算化学の分野はこのような状況の到来をいち早く予想し,日本でも20年以上も前から質の高い情報を集約したDBを開発し公開してきました.計算化学に関係の深いDBとして,量子化学データベース(QCDB)研究会と分子科学研究所が20年の長きにわたって開発・公開している量子化学文献データベースQCLDBが あります.この文献DBは,対象が非経験的分子軌道計算の論文に限られていますが,論文の題名とページ,要旨のみが収録されているのではありません.この DBには論文中で計算された分子,物性,計算方法,計算精度などが計算化学分野の研究者によって,集約・翻訳され,DBの情報だけで論文の内容と質が大体 分かります.QCLDBが開発される前は,イギリスのリチャードを代表とするグループが同様の情報を出版していました.その当時,大野公男,諸熊奎治を中心とする日本のグループは,インターネットと計算機の急速な発展を予想し,質の高いコンテンツをネットワークを通じて世界に発信することをポリシーとしてQCLDBの開発を始めました.ちなみにイギリスのグループは,日本のグループの活動を知るや否やその活動をやめてしまいました.当時の日本のグループの素晴らしい慧眼には敬服します.今でも計算の前にQCLDB検索というのが筆者の研究スタイルです.
QCLDB開発は科学研究費の 補助を受けて開発が進められてきましたが,残念なことに2005年に突然補助が一部打ち切られました.その理由は「QCDBの役割はすでに終わった」とい うことでした.ああ,なんと言うことでしょう!!世界が質の高い情報の選択と集約の重要性を認識し,QCLDBと同様なポリシーを持つDBが作られ始めよ うとしているときに,これは全く逆の方向です.ああ,もったいない!
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こういった膨大な情報からのエッセンス抽出の要求にいち早く対応したのがアメリ カで,YahooやGoogleに代表される検索エンジンや,類似性の高い情報の存在場所をまとめたデータベース(DB)があります.検索エンジンについ ては日本でもこのような技術の重要性がようやく認識され,10年以上も遅れて,政府主導で検索エンジンの開発が進められようとしています.
計算化学の分野はこのような状況の到来をいち早く予想し,日本でも20年以上も前から質の高い情報を集約したDBを開発し公開してきました.計算化学に関係の深いDBとして,量子化学データベース(QCDB)研究会と分子科学研究所が20年の長きにわたって開発・公開している量子化学文献データベースQCLDBが あります.この文献DBは,対象が非経験的分子軌道計算の論文に限られていますが,論文の題名とページ,要旨のみが収録されているのではありません.この DBには論文中で計算された分子,物性,計算方法,計算精度などが計算化学分野の研究者によって,集約・翻訳され,DBの情報だけで論文の内容と質が大体 分かります.QCLDBが開発される前は,イギリスのリチャードを代表とするグループが同様の情報を出版していました.その当時,大野公男,諸熊奎治を中心とする日本のグループは,インターネットと計算機の急速な発展を予想し,質の高いコンテンツをネットワークを通じて世界に発信することをポリシーとしてQCLDBの開発を始めました.ちなみにイギリスのグループは,日本のグループの活動を知るや否やその活動をやめてしまいました.当時の日本のグループの素晴らしい慧眼には敬服します.今でも計算の前にQCLDB検索というのが筆者の研究スタイルです.
QCLDB開発は科学研究費の 補助を受けて開発が進められてきましたが,残念なことに2005年に突然補助が一部打ち切られました.その理由は「QCDBの役割はすでに終わった」とい うことでした.ああ,なんと言うことでしょう!!世界が質の高い情報の選択と集約の重要性を認識し,QCLDBと同様なポリシーを持つDBが作られ始めよ うとしているときに,これは全く逆の方向です.ああ,もったいない!
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